ドリーム(原題:Hidden Figures)感想
こんばんは、ニノマエです。
年末年始は風邪気味で、のどが大変なことになりました。
のどを痛めたせいで声がプロレスラーの天龍源一郎さんみたいな声でずーっと接客してました。
僕が客の立場だったら、相当ビビりますね!
ビビらせてしまったお客様には申し訳ないですが、それ以上高い声が出ないんだからしょうがない。
風邪なんてひくもんじゃないですね。
さて、今日は「ドリーム」という映画を紹介します。
この作品はアメリカの有人宇宙飛行計画である「マーキュリー計画」の裏側にいた、NASAの女性スタッフの物語です。あらすじは以下の通り。
1961年、アメリカはソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。NASAのラングレー研究所には、ロケットの打ち上げに欠かせない“計算”を行う優秀な黒人女性たちのグループがあった。そのひとり、天才的な数学者キャサリンは宇宙特別研究本部のメンバーに配属されるが、そこは白人男性ばかりの職場で劣悪な環境だった。仲の良い同僚で、管理職への昇進を願うドロシー、エンジニアを目指すメアリーも、理不尽な障害にキャリアアップを阻まれていた。それでも仕事と家庭を両立させ夢を追い続けた3人は、国家的な一大プロジェクトに貢献するため自らの手で新たな扉を開いていくのだった……。
1960年代といえば、キング牧師をはじめとするアフリカ系活動家による公民権運動が広がりを見せた時代です。と同時に、米ソ対立が宇宙開発にまで及んだ時期でもあります。そんな中でNASAでは、ソ連に追いつくために有人宇宙飛行を計画します。その名は「マーキュリー計画」。そのうら側で働いていた、アフリカ系女性3人の物語です。
当時は白人専用のものと非白人用のものが分けられており、さらに女性の地位も今より低く見られていたこともあって、キャサリン、ドロシー、メアリーは様々な格差や差別にさらされます。メアリーが目指すエンジニアの資格は白人男性のみが取得可能であることや、アフリカ系女性は管理職に就くことができない。また、トイレに行くときは800m離れた「非白人用」のトイレに行かなくてはならないなど、現代では考え難いようなルールのもとに置かれていました。
彼女たちはそれに屈したか?いいえ、もちろん立ち向かうのです。そうじゃなくちゃ映画として面白くないですから。
とはいえ、面と向かって「女性差別反対!」と声をあげたわけではありません。彼女たちはNASAの研究、それもロケットの軌道計算に携わるような才媛ぞろい!なのでやり方も非常にスマートかつクレバー!
この物語で一番メインで描かれるキャサリンは、大学に飛び級で合格するほどの数学の才能の持ち主なのですが、配属された部署は白人男性ばかり。そのため非白人用トイレが存在せず、トイレに行くときには片道800m、往復1600m、時間にして40分もかけなくてはならない。キャサリンの上司、アルは彼女の能力に期待していましたが、数字のこと以外は目に入ってないようで、なぜ彼女が度々姿を消すのか全く知りもしませんでした。ようやく非白人用トイレがない、みんなと同じコーヒーも飲めないということを知ったアルは、非白人用トイレの看板をハンマーでたたき落とし、撤廃させたのです。そしてアルは宣言します。「NASAでは小便の色は同じだ、これからは白人も黒人もない。席からできるだけ近い位置のトイレを使いなさい」と。アルの行動も格好いいですが、これは彼女が能力によって認められたからこそ成り立った革命です。
管理職を渇望するドロシー、エンジニアを夢見るメアリーもそれぞれのやり方で道を切り開いていきます。特にメアリーの解決方法は誰も傷つけることなく結果を勝ち取ります。この映画の中でも屈指の名シーンと言えるでしょう。
さて、この映画で重要になるのはやはり「差別」でしょう。NASAのような世界的な機関であっても差別は当たり前のように存在していること。そしてそれは差別している側はあくまで無自覚であるということ。そして差別によって、才能を殺すことにもなってしまいます。
キャサリンの活躍によって、人種の壁が取り払われたトイレでドロシーが白人上司に言われた「私はあなたに対して偏見は持っていないわ」という言葉に対してドロシーは「あなたがそう思い込んでいるだけよ」と返します。ここに見られるように、差別・被差別の関係性が内面化されることで、人は差別に対して、痛みに対して鈍感になれるのです。そしてそれが新たな差別を生み、負のスパイラルができていくことになります。この映画で登場する3人の女性はそのスパイラルに打ち勝った。それだけで評価されてしかるべきだと考えます。
ただ肌の色が違うだけで、それが足かせになっていた彼女たち。
彼女たちがその分野で活躍するには、白人たちの何倍もの努力と勇気、そしてその方法を見つけ出す知恵が必要だったということが見て取れる映画だったと思います。
評価:10点中8.5点